第8章 お引越しとお宅訪問
「私が杏寿郎君や皆に迷惑をかけるの!死ぬとは決まってないけど、死ぬ確率が高くなっちゃう……そんなの耐えられない!」
「君は柱の力をどう見てる?俺達が十二鬼月を倒して見せればその力を認めるか?上弦の鬼を倒せる程までになれば信じるのか?」
更紗とは正反対に落ち着き払った杏寿郎の声に、更紗は心臓を鷲掴みにされるような感覚に陥り、涙が瞳を覆っていく。
「ち、違う。私は信じていない訳じゃない!私の気持ち分かってよ!私だって……」
その先を言いかけて更紗は慌てて口を噤むも、杏寿郎がそれを聞き逃すわけもなく先を促してくる。
「更紗の気持ちは言ってくれないと分からんし、恐らく聞いて理解はしても同意はしてやれない。それで、私だっての続きは?」
更紗は奥歯を噛み締めもどかしい気持ちをどうにか落ち着けようとする。
その先は言えないし、言ってはいけないと思っているのだろう。
「続きなんて……ないよ……」
「嘘はつかないでくれ……君が俺達を案じてくれているのは分かっているが、それはさすがに堪える」
悲しげに顰められた炎のような瞳が更紗の胸を締め付け、意思とは関係なく涙が流れる。