第8章 お引越しとお宅訪問
「悲しむだろうが致し方ない。いくらお館様が巧妙に俺の家を隠してくれていたとしても、そもそも知られていては意味を成すのか分からんからな……」
天元は杏寿郎の今まで見たことのないほどの悲しげな表情に眉をひそめるも言葉を続ける。
「これは確認だが、姫さんは根無し草になる。それがいつまで続くか分かんねぇ間、煉獄はどうするつもりだ?それによって答えが派手に変わってくる」
分かりきっていることを聞くなと言わんばかりに、杏寿郎は悲しげな表情を吹き飛ばし溌剌とした表情、声音に一瞬で変化した。
「更紗は許嫁であり俺の継子だ!可能な限りそばに居るに決まっている!父上や千寿郎も必ず納得してくれる!なんなら家を建ててもいいと思っているぞ!」
想像通りの答えに、天元は拳で杏寿郎の肩を軽く叩く。
「そうくると思ってたぜ!その場合はお館様が形式上、お前が望んだという形で屋敷を賜ってくださることになってる。煉獄の生家の隣町にでも用意してもらえば、全員の寂しさも派手に減るだろ!ちなみにお前がそばにいない選択をした場合は、俺の家で預かる事になってた」
「それは有難いな!少しは更紗の気持ちも楽になるだろう。君の家も更紗にとっては居心地は悪くないだろうが、辛く悲しむ時には俺がそばにいてやりたい」