第8章 お引越しとお宅訪問
それから賑やかな昼餉をとり、杏寿郎は天元に半ば強制的に酒を勧められ、更紗は嫁達に愛でられ揉みくちゃにされていた。
日は傾き始め、そろそろ夕日に移り変わろうとしている。
「今夜、お前ら泊まってけ」
窓の外を見た天元はいきなりそう言い出した。
その真剣な表情は拒否すると言う選択肢すら杏寿郎から奪っていく。
嫁達に至っては天元の表情を一瞬確認すると、真ん中で息を切らしている更紗をまるで部屋から遠ざけるように、先程の賑やかさを保ちつつ風呂へと誘う。
「姫ちゃん、今度は私達とお風呂に入りましょ」
雛鶴の声に更紗は首を傾げ、当然の反応を示す。
「先程、お風呂は入らせていただきましたが……」
「いいからいいから!煉獄様、姫ちゃん連れていきますね」
戸惑っている更紗を助けてやりたいと思うが、天元はもちろん嫁達も笑っているにも関わらずピリピリした雰囲気を漂わせている。
杏寿郎に対するまきをの問い掛けも、問いではなく了承のみを求めるものだ。
「今夜は世話になるから、行っておいで」
「え、杏寿郎君、でも……」
「煉獄様から許可も下りたんだし入ろうよ!体洗いあいっこするの!」
杏寿郎は心の中に嫌な予感を感じつつも、それを出さぬよう笑顔で更紗を見送った。