第2章 追い風
「しのぶ、この子は杏寿郎の家で杏寿郎が柱の責務の合間を縫って育てる。だけど、更紗の力に関しては、杏寿郎1人では難しいと思うんだ。きっと更紗自身も力を完全に把握し切れていないだろうから、杏寿郎と協力して更紗の力になってあげてもらえないかい?」
もちろんですと言うように、笑顔でしのぶは頷く。
「御意」
「ありがとう、しのぶ。では2人とも、更紗の事をよろしく頼むよ。更紗も、次は鬼殺隊剣士として会える事を楽しみに待っている。さぁ、時間を作ってくれてありがとう。君達全員に多くの幸があらんことを」
「「有難く存じます」」
2人が答える横でまた更紗だけ置いてけぼりになってしまった。
でも無言もいけないと思い、少しばかりの恥ずかしい気持ちを抑え
「ありがとうございます」
と頭を下げて精一杯の感謝を述べた。
お館様はその様子を笑顔で見つめると、ここへ出てきた時と同じように2人の美しい幼子に連れられて部屋へと戻って行った。
更紗はその様子を最後まで見て、そのままの体勢で固まっている。
そうすると華奢な手のひらが、まるで蝶々のようにヒラヒラと目の前を優雅に揺れだした。