第8章 お引越しとお宅訪問
「もしかして姫ちゃん達、一緒にお風呂入った事ないの?」
「お前ら婚約して一緒に住んでるんだよな?」
風呂を共にした事はあるにはあるが、あれは数には入らないだろう。
杏寿郎の最終試験を突破する為だけに、更紗が恥も何もかもかなぐり捨てて突撃しただけだ。
「婚約すれば一緒に入るものなのか?」
「いや、強制ではないけど入るものだと思ってたから……ねぇ?雛鶴」
全員の視線を一斉に浴び困ったように頬に手を当て眉を下げるも、やはりそこは期待を裏切らず天元の嫁の1人。
ニコッと戸惑う2人に笑顔を向け一言。
「入っちゃいましょう」
まさに鶴の一声。
それまで、どうしようかと言う雰囲気だったにも関わらず、今や天元は杏寿郎を連行し、須磨とまきをは更紗の両手を引っ張って風呂場へと続く廊下を意気揚々と歩き出す。
「あ、あの!お風呂は……もちろん1つですよね?」
「ぁん?家ん中に風呂が2つも3つもあってたまるか!派手に観念して煉獄と仲良く入んな、姫さん!」
顔を真っ赤にする更紗に須磨がすかさずじゃれ付き、腕にしがみつきながらも引っ張る力は弱まらない。
「1人より2人で入った方が楽しいよ!家でも入ったらいいのに!」