第8章 お引越しとお宅訪問
(無性に抱き締めたいがここはいかん!)
と杏寿郎は更紗へと伸ばしかけた腕を元に戻し、せめてもと触り心地の良い髪を梳くだけに留めた。
「俺も同じだ。君といると心地良い」
何となく桃色の空気を漂わせている所へ、パタパタと数人が走りよってくる足音が聞こえ2人がそちらに視線を向けると、その瞬間更紗の視界が真っ暗になった。
「きゃーー!貴女が姫ちゃんね?可愛いーー!!ずっと会いたかったの!」
「こら、須磨!姫ちゃんが固まってるでしょ!離れなさい!」
と聞き覚えのない声が更紗の鼓膜を響かせ、更に更紗に抱き着いているであろう人とそれを引き剥がそうとしている人もいて、更紗はあっちにこっちにと引っ張られフラフラしている。
「2人ともよしなさい。姫ちゃんが転んでしまうわよ」
穏やかに窘める声にようやく更紗は解放され、隣にいる杏寿郎がフラフラな更紗の背を支えてやる。
「熱烈な歓迎だな!貴方達が宇髄の奥方達ですか?」
その問いに答えたのは少し遅れてやって来た天元だった。
「俺の派手に自慢の女房達だ!窘めたのが雛鶴、姫さんに抱きついたのが須磨、んでその須磨をひっぺがそうとしてたのがまきを。家族共々よろしく頼むわ」