第8章 お引越しとお宅訪問
耳元で囁かれ、更紗は体をピクッと跳ねさせ顔だけでなく耳や首までも赤く染っていく。
自分の上半身を包むものは襯衣だけなので、背中越しに鼓動が杏寿郎に響きそうなほど、どんどん早く強く打ち始める。
「いぇ……神久夜さんが濡れてしまいそう……でしたので」
杏寿郎はみるみる熱を帯びる体温を感じ、抱きすくめる力を強め自らの顔を更紗の首元に埋め小さくため息を零した。
「何度も言うが他の者の前でこのような無防備な姿を晒さないでくれ。男は獣だ、それに……俺以外に見られると思うと……辛抱ならん」
細くくびれた腰を抱いている腕でゆっくりその体の線にそって動かすと、くすぐったいのだろう……身をよじらせ浅い呼吸が更紗の口から盛れる。
「杏寿郎……君、こそばゆい……です」
「わざとそうしている」
わざとだと言われ、もうどうすればいいのか分からず更紗は頭の中が混乱して身動きが取れず、その刺激をただ受けるだけになってしまう。
そうしてる間にも、熱くなった体の上をゆっくり手が滑り、やがて心臓付近で静止した。
杏寿郎の手のひらから嫌でも熱が伝わり、更紗は体温が一気に上昇し、それに合わせて心臓は破裂せんばかりに鼓動を早めていく。