第8章 お引越しとお宅訪問
朝から出発し、現在は正午前の昼時となった。
もう四半刻程で天元の家へ辿り着くと言うところで雨に降られ、2人は木の下で雨宿りをしていた。
更紗は羽織を濡らさないよう風呂敷で包み袋の中に入れたが、何を思ったか隊服の上着までも脱ぎ出し、杏寿郎は目を剥いている。
「更紗?!何をしている?!」
「神久夜さんが濡れてしまいそうなのです。こんなに小さな身体だとすぐに体温が奪われると思いまして」
そう言って、風呂敷に包み赤子のように抱っこされて眠っている神久夜に上着を屋根のようにしてやっている。
だがそうしている間にも更紗の襯衣は雨に濡れ更紗の体温を奪っていくばかりか、杏寿郎の目のやり場も奪っていく。
「こちらに来なさい。そのままだと更紗が冷える……それに俺の理性が弾け飛ぶ!」
そう言われようやく自分の服がどういう状態なのかを理解し、隠そうとするも両手は塞がっておりその場で慌てるしか出来ずにいる。
杏寿郎は苦笑いを浮かべ自らの羽織を更紗の肩に掛けてやり、肩を抱き寄せて後ろから温めるように包み込んでやった。
「君は本当に無防備だ。そんなに俺の理性を外したいのか?」