第8章 お引越しとお宅訪問
「なんと言いますか、天元様らしいですね!急とは言え、ここまで歓迎していただけると嬉しいです!」
急も急すぎるが天元の鎹鴉が急ぎ天元の元へ戻り、その後すぐに更紗のいる藤の花の家紋の家と杏寿郎の実家へ鼠を走らせるくらい歓迎してくれているのは、喜ぶところなのかもしれない。
杏寿郎は以前に天元が言っていた通り2人は互いの家を行き来するほどの仲ではなかったので、ここまで天元と自分を結びつけてくれた更紗に感謝の念が湧いてきた。
「更紗」
更紗が返事をする前に杏寿郎は神久夜を抱きとめたままの更紗の体をフワッと抱きしめる。
「どうされましたか?」
杏寿郎の胸元から笑顔で見上げてくる更紗の頬を撫でながら軽く接吻を交わす。
一気に赤くなる更紗を愛おしいと言わんばかりに、神久夜を押し潰さないくらいの強さでもう一度抱きしめた。
「君は凄いな。俺はもちろん宇髄やその奥方までもが更紗を好いている。優しさや健気さ、目的の為に努力を惜しまぬ強さ……それらに惹かれるのだろう。たまに好かれすぎて妬けてくるのが難点だ」