第8章 お引越しとお宅訪問
だが、杏寿郎にとっては任務が立て続けに入る事は珍しくなく、今日より更に短い時間の休息で次の任務に向かう事も少なくないので、むしろ今から任務でない分、天元の家に向かうくらいわけないのだ。
「俺は問題ない!問題ないのだが……どうやら行くしかないようだ」
「え?どうしてですか?」
更紗の疑問を解決させる為、杏寿郎は閉められていたはずの窓の方を笑いながら指差す。
「客人がいらしてる」
更紗が視線を移したその先には、例の筋骨隆々な鼠が腕を組んで姿を現していた。
「えっと……あの子は??」
以前に更紗が攫われた時に大活躍した天元の忍鼠だが、更紗は直接会っていないので知らないのである。
額当てや筋骨隆々さが主人とそっくりなので、ある程度検討は着いているが……
「彼は……彼女か?どちらか分からんが!宇髄の鼠でな、ここに君を迎えに来たのだろう!」
「私を??でも、杏寿郎君もご招待いただいてますよね?」
「きっと今頃、煉獄家にも遣いの鼠が向かっているだろう。千寿郎も父上も驚いているだろうな!」
1度見たことあるとはいえ、神久夜と杏寿郎の鎹鴉の次に筋骨隆々な鼠がいきなり家を尋ねてくると驚くのは間違いない。