第8章 お引越しとお宅訪問
今の自分の弱さを嘆いた所で過去は変わらないし、実力が飛躍的に伸びる訳でもない。
自分の今の実力を知り、それを強くしようとする日々の努力が大切だと理解した更紗は大きく頷く。
「はい!師範、これからもよろしくお願い致します!」
決意を新たにした継子に笑顔で頷くと、杏寿郎は屈んでいた体勢を元に戻しながら更紗の手を握る。
「あぁ。だが、君が今1番必要な事は体を癒すことだ。それが済んでから、将来俺と肩を並べ闘えるよう鍛えてやる」
穏やかな笑顔と口調だが、言っていることはなかなかに鬼な言葉だ。
だが、それも更紗が望んだこと。
更紗も手を握り返しフワリと笑って返す。
「早く杏寿郎君と肩を並べ闘いたいです。まず十二鬼月の下弦を倒せるよう……」
更紗が言葉を発している途中で、黒い何かが勢い良く2人の間を通り過ぎ、思わずそちらに意識が集中して全てを出すことが出来なかった……
杏寿郎も呆気にとられたようにそちらへ意識を向けると、相も変わらずおっちょこちょいな鎹鴉、神久夜が畳の上を勢い良く滑り転がっている姿が目に入った。
「更紗、君の意気込みは受け取った!フフッ……その子の……様子を見てやるといい……フフッ」