第8章 お引越しとお宅訪問
「あのー……私はこれにて失礼させていただこうかと思います。あ、私は元とは言え月神家の秘密を守る者の1人ですので、他の隊士にも、もちろん鬼にも一般の人にも力の事は話しませんので、ご安心ください」
棗はもう一度深く頭を下げ、暇の許可と秘密の厳守を2人に約束する。
「そのような事、そもそもそなたに心配などしていない。人を見る目には自信があるのでな!それよりも、俺が来たことによって邪魔をして済まなかった」
柱に何度も謝罪をされる棗は気絶しそうな感覚に陥るも、なんとか気をしっかり持ち部屋を出るまではと踏ん張る。
「一剣士に謝罪は必要ありません!私はもう目的を達する事が出来ましたので、全く問題ございません!」
「目的?」
キョトンと首を傾げる杏寿郎に毒気を抜かれ、棗は肩の力を抜き笑顔で答える。
「いえ、こちらのお話ですのでお気になさらず」
「あの!棗姉ちゃん!」
更紗は杏寿郎の胸元から抜け出し、少し悲しげに棗を見つめ小さな声で可愛いお願いをする。
「名前、いつも通りに呼んでいただきたいです」
自分は敬語のくせにと思いながらも、更紗らしい小さな願いに満面の笑みで頷く。
「またね、更紗ちゃん!また一緒に闘ったりお出かけしようね」
更紗がそれに対してフワリと嬉しそうに笑ったのを確認すると立ち上がり、2人へ深くお辞儀をして棗は部屋を後にした。