第2章 追い風
「そうだね。私達にとっては希望の光、鬼にとっては野望の成就とだけ言っておくよ。そこでなんだが、更紗には私達の光になって欲しいと思っている。杏寿郎からは、杏寿郎が育手となり更紗を鬼殺隊剣士に育て上げると聞いている。その事について、しのぶはどう思うかな?」
しのぶはニッコリとした笑顔で答える。
「私はこの子に会うまで、正直に申しますと剣士にする事には反対でした。聞いた事のない力なので、鬼殺隊内に混乱が起こる可能性もございましたし」
1度言葉を切り、更紗に笑顔を向けると、またすぐにお館様へと視線をうつす。
「しかし、この子に対する煉獄さんの言動、そして私が実際に話した感覚ですと、鬼殺隊に相応しい、人に対する優しさと思いやりに溢れています。煉獄さんの鍛錬に耐えうる忍耐力と体力があるのであれば、私は賛成致します」
お館様は頷く。
そして次は杏寿郎へと向き直る。
「杏寿郎はどうして更紗の育手を自ら買って出たのかな?」
杏寿郎は1度頭を下げ、再度お館様を見つめ笑顔でハキハキと答える。
「更紗は厳しい環境に望まず長い期間置かれていたにも関わらず、人を思う温かい心を忘れませんでした!人1人を救うために、真夜中の山中を傷だらけになりながらも懸命に命を繋ごうと抗っていました」