第2章 追い風
するとお館様は杏寿郎に視線を移した。
「杏寿郎、よく助けてくれたね。ありがとう」
「勿体ないお言葉です」
フフッとお館様が優しく笑うと、杏寿郎もしのぶも嬉しそうに顔を綻ばせた。
「さて、今日来てもらったのは3人とも理解してくれていると思うが、更紗の事だよ」
3人を見渡し、再び更紗で視線が止まる。
「更紗は優しい子だね、心配してくれてありがとう。でも、この顔の傷は君の力でも治せない。そう言った類のものじゃないからね」
更紗はどう返していいのか分からず、ペコリと頭を下げるしかできなかった。
「君の力は私も聞いたことがないけれど、おそらく私が率いる鬼殺隊、そして鬼にとっても多大な影響を与えるものだと思っている」
自分の力が周りにそんなに影響が出るだなんてピンと来ないようで、少し首を傾げる。
「私の力が……どのように皆様に影響されるのでしょうか?」
更紗は少し怯えるように声音を震わせて尋ねる。
「ごめんね、怖がらせてしまったかな?ただ、更紗は自身の力の強さを知らなくてはいけないよ」
優しい言葉遣いだが、有無を言わせぬ響きを纏っている。
言葉を遮ることが出来ず、お館様の次の言葉を待った。