第8章 お引越しとお宅訪問
あまりの過保護ぶりに天元が聞くと笑いそうだが、本人は至って本気で更紗を心配し、任務後の疲れた体を無視してこうして駆けつけたのだ。
「ありがとうございます。でも杏寿郎君、今隣りに合同任務を共にした方がいらっしゃるので……」
更紗の小さな声に杏寿郎は勢い良く横に顔を向けると、驚き若干引き気味の少女が目に入り、ゆっくりと更紗から離れ体をそちらに向ける。
棗は棗でその視線で我に返ったのだろう、居住まいを正し両手を畳につけ頭を下げた。
「君が……そうか!任務ご苦労だった。共に更紗と鬼を滅し生きて戻ってくれたこと、嬉しく思う」
思っていたより穏やかで優しい声に棗は僅かに緊張を和らげ、杏寿郎の労いの言葉に感謝を示す。
「ありがとうございます、そしてお初にお目にかかります、桐島棗と申します。実は更紗さんとは同郷の昔馴染みでしたので連携も取りやすく、比較的早く鬼を滅する事が出来ましたので……」
棗がそこまで言って顔を上げると、杏寿郎は喜んでいると見ただけで分かるほど笑顔になっていた。
「よもやよもやだ!更紗、良かったではないか!こんな偶然、早々あるものではないぞ!」