第8章 お引越しとお宅訪問
すると更紗の眼前に今までとは比べ物にならない程の数の鋼の糸が、信じられない程の密度で迫ってくる。
このまでは鬼の言葉通り細切れになると察知し、更紗は立ち止まり足を踏ん張る。
「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり」
前方に技を出し糸を切っていくが、全てを防ぐ事は叶わず顔や胴体に足にとどんどん傷が増えていく。
この状況だと、後ろに控える棗にも多くの攻撃が向かっているだろう。
(これくらいの攻撃、杏寿郎君なら簡単にいなしてしまうのでしょうね)
強く逞しい己の師範の顔を思い浮かべ苦笑いをこぼすと、鍛錬の時によく言われていた言葉を自らの口から発する。
「心を……燃やせ!」
言葉一つでいきなり強くはならない。
だが、めげそうな心を奮い立たせる事は出来る。
「私達は死なない!あなたを倒します!」
傷だらけになりながらも鬼の攻撃を切り抜け、距離をとっていた鬼へもう一度足を動かす。
「風の呼吸 漆ノ型 勁風・天狗風!」
棗の声が後から響くと同時に、更紗の体は強い風に押されるように速度が上がり体が空中に誘われた。
(ここからなら!!)
「炎の呼吸 参ノ型 気炎万象!」
上から下へ刀に炎を纏わせながら、曲線を描き鬼の頸目掛けて刀を薙ぐ。