第8章 お引越しとお宅訪問
「はい!ありがとうございます」
棗の指示に更紗は刀を鞘にしまい、男性に向き直る。
「女性は私が運ばせていただきます。あなたに生きてもらうためです、私を信じて預けてくださいませんか?」
男性は妻と更紗を1度交互に見て、決心したように手を差し出している更紗に妻の体を預けた。
「お願いします」
更紗が女性を受け取り横抱きにして、男性に向かって頷く。
「全力で走って着いてきてください。行きます」
その声を男性が聞く頃には更紗は既に自分から離れた所を走っており、慌ててその後を追う。
更紗は男性の様子を伺いつつ、隠を探し声を出す。
「隠の方、いらっしゃいましたら、こちらの男性達をお願いします!」
すると立ち並ぶ家の間から目元以外を布で隠した人が2人出てきた。
間違いなく隠だと更紗は確認すると、2人の前に立ち止まり女性を手渡す。
「くれぐれも丁重に扱ってください。こちらの男性の奥様ですので」
後ろからようやく追いついた、肩で息をしている男性の背に手を当て隠に願う。
「こちらの方々はお任せ下さい。月神さんも、どうかお気を付けて」