第8章 お引越しとお宅訪問
現場に更紗が辿り着く頃には、すでに戦闘は開始されており棗は鬼と離れた場所で刀を振り、何かを切っているようだった。
更紗が日輪刀を鞘から抜き出し辺りを見回すと、刀を振るう棗の近くに血塗れの女性を胸に抱き、力なく地面に座り込んでいる男性が目に入った。
「襲われた人?!早く安全な場所へ移動させなくては!」
言うが早いか、更紗は日輪刀を片手に走り出すも、目の前に鋭い細い線が走ったのを確認し、滑り込む形で回避する羽目になった。
それで棗も更紗が到着したことを悟り、視線を鬼に向け刀を振りながら言葉を発した。
「あの鬼は鋼の糸のようなものを操ってる!しかも鋸みたいにギザギザしてて、突っ込んだらそこから真っ二つだから気を付けて!あと……ごめん、女性は助けられなかった」
悔しそうな声音に更紗の胸も傷んだが、今は悲しんでいる時間はない。
早く被害者達を移動させなくては男性も犠牲になり、棗も本領を発揮出来ない。
「分かりました!被害者は私が誘導して安全な場所へ移動していただきます!すぐに戻りますので、それまでここをお願いします」
「うん、お願い!」