第8章 お引越しとお宅訪問
棗は更紗を解放し、笑顔で手を握り歩く事を促すように軽く引っ張る。
「詳しい話は食事処で聞かせて?任務の前に更紗ちゃんは腹拵えをして、ちゃんと万全な状態でいなくちゃ危険だしね。そこから聞き込みと打ち合わせもしなきゃ」
やはり村出身ならば、更紗の力の事をきちんと理解している。
あの屋敷のただ人を便利な道具扱いする人間とは違い、気遣ってくれる棗に更紗は自然と笑顔がこぼれた。
「はい!私、よく食べるので……」
「それも知ってるよ!気にせず沢山食べて」
そうして食事処に到着し、2人は食事が運ばれてくる前に先程の話の続きを行っていた。
あの屋敷での出来事、鬼に襲われ杏寿郎に救い出され、更に育手として更紗を育ててもらい、今は継子として煉獄家に身を寄せていることを話すと、棗は驚き冷や汗を流している。
「怒涛の数ヶ月だね……その間に最終選別を突破した事に私は驚きを隠せないよ」
棗の言葉通り、育手に鍛錬を積んでもらい、数ヶ月で生きて最終選別から戻ると言うのは至難の業に近い。
蜜璃は半年で突破したと言うが、それは誰もが驚く快挙だったのだ。