第8章 お引越しとお宅訪問
更紗の言葉に棗は笑顔で首を左右に振り、頬に流れる涙を拭ってやる。
「思い出してくれてよかった。でも、もう泣かなくて大丈夫だよ。確かに当時は辛かったけど、今は剣士として人の笑顔を守れて、数ヶ月前に無事に両親の仇も取れたんだよ!それより更紗ちゃん、貴女攫われたって村で大騒ぎになったけど……まさか鬼殺隊の関係者に?!」
棗の勘違いに更紗の涙は吹き飛び、今度は更紗が激しく首を左右に振った。
「違います!とある屋敷の人に……その……治癒してるところを見られてしまい、そこで11年人を治癒させられてたのですが……」
そこまで言って更紗は棗の様子を伺うように上目遣いで見つめる。
今は鬼殺隊と言えど、棗は治癒の力が外に盛れださないよう秘密を守り続けていた村人である。
もちろん村での更紗に対する約束事も知っている為、それを破った更紗に怒ってもおかしくはない。
だが、棗の表情を確認出来る前に更紗の肩は抱き寄せられ、背中を優しく撫でられる。
「そっか……まだ小さかったもんね。誰も更紗ちゃんを怒れないし、怒ったら私が反対に怒ってあげる!」