第8章 お引越しとお宅訪問
鬼殺隊は剣士、隠などに関わらず例外を除いて、肉親や大切な人を鬼に喰われた者、または杏寿郎のように代々鬼狩りを生業としている者が多い。
もちろん更紗の生まれ故郷である村には、代々鬼狩りを生業としていた家系はない。
棗は本来ならば鬼殺隊には縁がないはずなので、例外でなければ1つしか鬼殺隊に所属する理由は無いのだ。
「お父さんとお母さんとね、山に山菜を取りに出掛けてたんだけど帰りが遅くなっちゃって……村に帰る途中に鬼に襲われて、私を庇って2人とも殺されたの」
その時の情景を思い出しているのだろう、愛嬌のある瞳を悲しげに細めながら更紗を見て僅かに微笑む。
「その時に助けてくれた剣士の人に育手を紹介してもらって、私も無事に鬼殺隊剣士になったのが3年前」
棗は自分の代わりに涙を瞳に溜めた更紗に近付いてその額に自分の額をコツンと合わせた。
すると更紗の瞳に溜まっていた涙がポロポロこぼれ落ち、棗の隊服が握られる。
これは幼い頃、転んだりして泣いた更紗に棗が必ずしていてくれた事だ。
その棗の行動が更紗の記憶を刺激し、自分の両親をはじめ村での出来事を一気に蘇らせた。
「棗姉ちゃん……辛い事を思い出させて……ごめんなさい」