第8章 お引越しとお宅訪問
柱の継子ではなく更紗より上の階級と言う事は、自力で自らを磨き多くの鬼を滅してきた尊敬に値する人物である。
「それほどの方の足手まといにならないようにしなくてはいけませんね。少し緊張してきました……」
そんな更紗の気持ちを落ち着かせる時間は与えられることなく、船は無事に港町へと辿り着いた。
船を動かしてくれていた人に礼と別れを告げ、更紗は夕日が沈み行く海岸線を瞳いっぱいに映し先程までの緊張が吹き飛んだのだろう、今は目を輝かせている。
「初めて見る海がこんなに燃えるような海だなんて、何やらご縁を感じます!杏寿郎君の瞳にそっくりの色です、綺麗!!」
「確かに綺麗だよねー!」
独り言に返答があり、更紗は反射的に後ろを振り返りその姿を確認する。
顎程の長さで前髪も切りそろえられた黒髪。
薄く緑がかった瞳は切れ長ながらも、黒目勝ちで愛嬌がある。
身長は更紗よりも高く、それに伴い手足もスラリと伸びている。
そんな体躯を包んでいるのは鬼殺隊の隊服だった。