第2章 追い風
辿り着いた場所は数え切れないくらいの畳が敷かれた部屋が見える庭だ。
奥には襖がある事からそこからお館様が出てくるのだろうと更紗は何となく感じ取り、そちらを見つめる。
「今からそんなに緊張してるとお会いする頃には疲れてしまうぞ!気合いがあるのはいい事だが、もう少し肩の力を抜くといい!」
そう言われ更紗はまともに呼吸もしていなかった事に気づき、慌てて深呼吸をした。
「ご当主様とお聞きしているので……そんな格式が高いお方とお会いするのが初めてでどうすればいいのか……」
そんな更紗の背中をしのぶが優しくさすってあげる。
「貴女ならそのままで大丈夫ですよ?ゆっくり、息をして、落ち着いて」
しのぶの声に習い、ゆっくりゆっくり呼吸を整えると気持ちにも少し余裕が出来たように感じる。
「ありがとうございます、すごく落ち着きました」
更紗の小さな笑顔に2人がホッコリしていると、襖がゆっくりと開き幼いながらも美しい女の子が2人出てきた。
『お館様のお成りです』
ピタリと合わさった2人の声を合図に、杏寿郎としのぶは一瞬で跪き頭を垂れた。
完全に置いて行かれた更紗は慌てて真似をしようとするが、着物なので跪けない。
どうすればいいのか分からなくなり、失礼ならないよう正座をして頭を垂れる。