第8章 お引越しとお宅訪問
「本当に更紗は俺の望む反応をしてくれるな!袴の着物に込めた想いもあるが、まずはここに入って荷物を整理しながらだ!」
いつの間にか離れの前に辿り着いており、杏寿郎は更紗の手を再び握り中へ入ろうとするが、その前に更紗が杏寿郎の腕にしがみつきにいった。
「私、これから先、想い続けるのは杏寿郎君だけです。あの、ですので……杏寿郎君もそうあってくれると嬉しいです」
見上げる瞳は恥ずかしげに潤み、それでもしっかりと杏寿郎を見つめている。
不意打ちの更紗の願いとその瞳は、杏寿郎の心を幸せで満たしていく。
「君はどこでそのような俺を喜ばせる言葉を覚えてくる?俺は幸せだ!もちろん俺が生涯想い続けるのは更紗だけだ!」
杏寿郎はその場で跪き、しがみつかれている腕を更紗の太ももにあてがい、そのまま一気に更紗を抱えあげた。
「わわっ!!」
いきなり抱えあげられ更紗の体は揺れるが、杏寿郎の頭に軽く腕を回し落ちることを回避する。
「この世でこんなにも幸せを与えてくれるのは更紗以外にいない!愛している、更紗」
幸せで仕方ないと言う顔を更紗に向けると、更紗も同じような表情で杏寿郎を見ていた。
「私も杏寿郎君を誰よりも愛しています」
新婚ではまだないが、そんな幸せな雰囲気を纏わせ、ようやく2人は新居へ足を踏み入れていった。