第8章 お引越しとお宅訪問
煉獄家は広いので部屋に余裕はあるが、家具を部屋から持ち出せばもちろんその部屋は空っぽになる。
杏寿郎の言う通り、わざわざ箪笥や書棚を背負ってやって来る変わり者はいないので、一通り生活を営めるくらいの家具があると継子希望者も助かる。
「継子の方が来られたら、きっと喜ばれますよ。私もそうですが、やはり部屋にそう言った物を置いてていただけると本当に助かりますから」
「男だけの家なので、更紗のような年頃の女子が喜ぶような家具はないがな」
杏寿郎は申し訳ないと言うように眉を下げるが、更紗は長年質素で可愛げなんて一切ない環境で育ったので気にした事はないようだ。
「私、杏寿郎君が贈ってくださった着物や袴を見て、衝撃を受けたのですよ?世の中にはこのような綺麗で可愛らしいものがあるだなんてって……あ、私気になっていたことがあるのですが、お聞きしてもいいですか?」
着物はもちろん、特に袴一式は杏寿郎が見繕ったものなので、喜んでもらえていたと改めて実感し、頬も柔々に緩みまくり目じりも下がりニコニコだ。
そんな状態の杏寿郎には、質問されると答える他考えられる道はない。