第8章 お引越しとお宅訪問
そのまま千寿郎の帰りを待っている間に顔の火照りを必死におさめ、僅かに顔を杏寿郎に向けるもやはり起きる気配はない。
うたた寝とは言え、今は熟睡しているようだ。
気持ちよさそうだなぁ、と考えていると千寿郎が戻ってきたようで杏寿郎の体を包むように上掛けが掛けられる。
更に千寿郎は更紗の前に来ると、寒くないようにと更紗にも上掛けを持ってきてくれた。
「千寿郎さん、ありがとうございます」
更紗の礼に笑顔で頷き上掛けを手渡すと、言葉を発することなく再び部屋を後にした。
(千寿郎さん!優しすぎます!本当に皆さん素敵過ぎます!)
千寿郎の優しさに感謝していると、杏寿郎が身動ぎし出すがやはり寝たまま……だが、更紗の体を固定している腕の力は強くなった。
(畳に寝かせて差しあげたいけれど、動かすと起きてしまうでしょうし……私の腕の力だけでは支える事も難しいですし……どうしましょう)
1人ウンウン心の中で悩んでいると、それを察したかのように杏寿郎は目を開け更紗の頬に手を当てた。
「すまない、少し眠っていたようだ。この上掛けは更紗が?」