第7章 不穏な影と全貌
「そ、そんな!顔を上げてください!でも、生きる事を諦めなくてよかったと、今は心から思います。今、こうして杏寿郎さんに触れられるのですから」
更紗は杏寿郎自身の膝の上で握られている拳を手で握り、顔を上げるように促す。
以前、更紗が煉獄家の庭でトラウマにより泣いた時に杏寿郎がしてくれたように。
「両親に始まり、奥方様、助けてくれた男性、杏寿郎さんと、私はいつも誰かがそばで支えてくれていました。こちらこそ、ありがとうございます」
杏寿郎は握られた手を握り返し、反対の手で更紗の頭を撫でる。
「それは君自身が引き寄せた縁だ。その縁が切れぬよう、俺は精進する事にする」
「では私も精進しなくてはですね」
2人は微笑み合うが、更紗も聞きたいことがあると言っていたので杏寿郎は話を続ける。
「それで俺に聞きたい事は何だ?」
「大した事ではないのですが、昨日は単独任務とお伺いしていたのに天元様とご一緒だったので、わざわざ呼んでくださったのかなぁ?と思いまして」
そう思うのは当然だが、更紗の思っていた事と真実は少し違うようだ。