第7章 不穏な影と全貌
「……血の跡が奥の部屋から廊下を伝い1つの部屋へと向かって続いていた。そしてその部屋の前と部屋の中に血溜まりがあり、そこからまた奥へと延びていたからな。あの鉄の扉の部屋に更紗は居たのだろう?」
あの状況でこれ程まで状況を確認していた……いや、確認してくれていたのだろう。
更紗が助けたかった人だと言ったから、記憶に留めておきいつか話そうとしてくれていたのだ。
「ありがとうございます。私以外にも見ていてくれた人がいて、記憶に留めておいてくださる方がいて、あの男性も救われる思いだと思います」
鬼から人を助け人が亡くなる。
その人が亡くなり、遺された人が心に傷を負い、それでも生きていかなければならない。
だからこそ鬼を、鬼舞辻無惨を倒さなくてはいけないのだ。
鬼がいるが為に、悲しむ人が居なくなるように。
「あの男性が生きられなかった分、託された思いを忘れず生き抜いて、1つでも多くの悲しみを生まぬよう鬼を滅殺しよう……そしてありがとう、辛い記憶も多いだろうに全てを話してくれて、生き抜いてくれて」
全て話してくれたこと、過酷な環境でも小さな光を自ら見つけ出し、懸命に生き続けてくれたことに杏寿郎は感謝し、更紗へ頭を下げた。