第7章 不穏な影と全貌
「もう少し休むか?休むならば俺は待っている」
話の続きだったことを思い出したのだろう、更紗はガバッと布団から上半身を起こし杏寿郎に向き直る。
「いえ!少し眠るとすごくスッキリしました。それに、私も杏寿郎さんにお聞きしたいことがございます。私の方が終わってから、お聞きしてもよろしいですか?」
やはり呼び方は今までのものが定着していて、更紗はその方が呼びやすいようで意識しなければ難しそうである。
杏寿郎もあえてそれには触れず、起き上がって更紗の問いに頷く。
「あぁ、構わない。俺が聞きたいことはあと1つだ。一緒に弔った男性はあの男の姉のご子息か?」
「そうです。奥方様が亡くなるまではあまり関わりはなかったのですが、亡くなってから私が家事をする時の見張りや、部屋に食事を運んでくださるようになって少しずつ会話が増えました」
懐かしむ表情は穏やかで、あの男性に対していい思い出しかないように思える。
あの殺伐とした環境で、奥方亡き後であってもその男性がいてくれてよかったと杏寿郎は心から思っているような笑顔で頷き応える。