第2章 追い風
しのぶから竹筒を受け取ると、中の水をゆっくりと喉に流し込んでいった。
もしかすると、塩以外にも更紗の体調を良くする薬も入れていてくれたのかもしれない。
水を飲んで少しすると、更紗は瞬く間に元の顔色に戻った。
そして未だに気まずそうに明後日の方向を見つめている杏寿郎をチラッと見遣る。
「胡蝶様、お水ありがとうございます。体調がすごくよくなりました。あの、よろしければ杏寿郎さんにも、お水を分けてくださいませんか?長い距離をずっと私を抱えて移動してくれましたので」
「必要ありませんよ」
と更紗の申し出を食い気味で跳ね除けた。
驚いてキョトンとしているその表情を見て、しのぶは鈴が転がるような声でクスクスと笑った。
「月神更紗ちゃん、煉獄さんは大丈夫ですよ。体格的にも体力的にも女の子のそれとは違います。更に鍛錬を日々行っています。煉獄さんならばそのくらいの事、朝飯前です」
ねっ!と言うように笑顔で首を傾げてしのぶが問いかけると、ようやく明後日の方向から戻って更紗に向き合う。
「うむ!柱としてあれくらいの事は全く問題ない!まだ往復しても足りるくらい余裕だ!」
「で、でも休んで貰わないと私が心配します」