第7章 不穏な影と全貌
更紗は布団でスヤスヤ気持ちよさそうに眠る間も、どこかに触れていないと不安なのか、今は杏寿郎の手を握っている。
「俺が男だと言うことを忘れているのではなくて、男がどんな生き物なのか分かっていないのだな。フフッ、本当に幼子のようだ」
杏寿郎は自分も布団の中に入り、更紗の背中を親が子にするようにトントンとリズム良く叩いてやる。
すると手を握る力が弱まり、かわりに杏寿郎の胸にノソノソと擦り寄ってきた。
(愛らしすぎる!!庇護欲を掻き立てられる!!)
庇護欲から抱き締めたい願望にかられ、擦り寄ってきた体を腕で包み込むと、さすがの更紗も銀色のまつ毛に彩られた瞼を震わせゆっくりと開き、柘榴石のような瞳で杏寿郎をぼんやり見つめる。
「んー……杏寿郎君?」
「不意打ち!!」
「だって呼んでいいって言ったから……」
「言った!だが、口調もいつもと違う?ような気もするが!不意打ちに不意打ち!よもやよもやだ!」
「口調……口調……?!すみません!寝惚けていました!」
寝惚けていたのが恥ずかしかったのか、口調が恥ずかしかったのか分からないが、再び杏寿郎の胸に隠れてしまった。