第7章 不穏な影と全貌
更紗は長く話し少し疲れたのか、ホッと息をついた。
「攫われてから5年間はこのような生活をしていました。その期間も言うことを聞かないと叩かれてはいましたが、奥方様がそばにいる時は庇って下さっていたので、両親の元に帰れない事と治癒をする事以外、当時は不自由だと感じていませんでした」
奥方の存在以外全てが不自由なのだが、そう考えていては生きていけなかったのだろう。
全てに嘆くのではなく、そばにある小さな救いを幸福だと感じなければ生きれない環境は想像を絶する過酷なものだ。
「そうか…… 更紗は元々が優しい性格なのだろうが、それを失わなかったのは奥方の存在も大きかったのかもしれんな」
「優しい……のかは分かりませんが、今思うと奥方様がいなければ今の私はいないかもしれませんね」
更紗はふとまつ毛を震わせ畳に視線を向ける。
その表情が寂しそうで悲しそうで、2人の胸を締め付けた。
「聞きにくいんだが……その奥さんはなんで亡くなったんだ?病気か?」
「自害……と聞かされました。でも本当の事は分かりません。いなくなる前日は元気でしたので、或いは……」