第7章 不穏な影と全貌
そして2人の姿が完全に見えなくなった後、天元は木刀を腰に戻して男に向き直る。
「俺は姫さんに惚れちゃいねぇ。だが、頑張り屋で健気で1人の男を心から慕う優しくて可愛い妹だと思ってんだわ」
この場に似つかわしくない笑顔でしゃがみこみ、男に視線を合わせる。
「俺の嫁達なんか会ったことない癖に派手にご執心でな、こっちが妬けるくらいだ。煉獄は今まで女に興味すら持たなかったくせに、今や姫さんにぞっこんときた。見てて派手に面白ぇくらいにな」
「な、何を……俺はもうあいつには手を出さんと……」
笑顔から一変、天元は殺意を両目に宿し、片膝で男の胴体を押し倒し片手で男の頭を床に押し付ける。
「姫さんの名前はあいつじゃねぇ。てめぇが舐めた口きくことなんぞ、こちとら望んでねぇんだ。派手に殺されたくなかったらその汚ぇ口閉じて耳だけ機能させとけや」
男は声も体も封じられ全身ガタガタ震わせて、言われた通り耳しか機能させられていない。
「口ではそう言いつつ、てめぇは未だに姫さんに未練タラタラなのが見え見えなんだよ……煉獄はそこまでは気付いてなかったようだが、てめぇ姫さん孕ませようとしただろ?んで、子供を産ませて姫さんは始末する予定だったか?」