第7章 不穏な影と全貌
「杏寿郎さん、大丈夫ですか?」
あくまで他人の心配をする更紗に困ったような笑みを向け、横抱きにして軽く更紗の唇に自らの唇を落とす。
「君は自分の傷の心配をしてくれると助かるのだが。さぁ、少し麓の街で手当てをしてから帰ろう。宇髄、付き合ってくれて感謝する。行こう」
だが天元は男を見下ろしたまま動こうとしない。
「天元様?」
「あぁーー、悪ぃけど先に山降りててくれ。煉獄、俺の言いたい事分かるよな?」
杏寿郎は目を見開き天元を止めようかと振り返るが、男の顔を見てそれを止めた。
まだ更紗を睨みつけていたからだ。
「程々にしてくれ。更紗が知った時に宇髄を思って悲しむからな」
「隊律に違反する事はしねぇから派手に安心してろ」
「分かった、麓の街の宿で待っている」
そう言い残して杏寿郎は更紗を連れて山を下っていく。
更紗の心配げな表情に天元の胸は傷んだが、少しでも安心させるように笑顔で手を振って見送った。