第7章 不穏な影と全貌
「更紗、遅くなってすまない!こんなに怪我をして……辛かっただろう!!早く帰って手当てしなくては!!」
更紗はギュウッと杏寿郎の首に腕を回ししがみつくように抱き着く。
「来てくださってありがとうございます。怪我は大した事ないので大丈夫ですよ」
天元はそんな二人の後ろに回り、からかいや冷やかしのない笑顔で更紗の頭に手を置き撫でてやる。
「姫さん、よく頑張ったな。姫さんの心からの叫び、派手に俺たちに届いたぜ!」
前回に続き、いつも2人に聞かれたくない口調の言葉を都合よく拾われ、更紗は顔を真っ赤にした。
「俺は更紗が怒れる事に安心した。よもやあの輩にまで優しさを出していたらと思うと身が凍る思いだった」
もう一度更紗はギュウッと杏寿郎にしがみつき、天元の手も赤く痣となっている手で握る。
「杏寿郎さん、天元様、本当にありがとうございます」
いつもの穏やかな声と、痛々しいながらもフワリと笑う更紗によって忘れそうになるが、目の前でこちらを睨みつけている男を忘れてはいけない。
鍛え上げられた肉体を持つ2人の男を前に、その輩は怯んでいるようだ。