第7章 不穏な影と全貌
「私は、鬼殺隊 炎柱 煉獄杏寿郎様の継子であり婚約者です!汚らわしい手で触れるな!私はあなたのような醜い人間が気安く触れられるような人間じゃない!」
2人がその声を耳にし更紗の姿を確認する頃には、更紗が渾身の力で男の鼻っ柱に頭突きを食らわせ、男が更紗の上で仰け反っているところだった。
更紗はまだ2人に気付いておらず、上半身を起こし男を力一杯押し戻している。
そんな更紗の額の皮膚は破けて血が滲み、頬は腫れ口の端からは血が流れている。
白く細い足首や手首は強く握られたのか、痛々しく赤く痣となっているのが杏寿郎の目に映った。
プツンッ
と杏寿郎は生まれて初めて、頭の中の何かが切れる音を聞いた。
その瞬間、体が勝手に動き手には木刀がしっかり握られている。
「おい、煉獄!!くそ、間に合うか?!」
天元が全力で走り出す直前、ようやく更紗は2人の存在を確認し叫んだ。
「杏寿郎さん!!私は無事です!」
その声に杏寿郎は僅かに勢いを落とし、男に向けていた殺気を鎮め更紗の元へ駆ける。
更紗が目一杯腕をのばし、自分を求めている細い体をありったけの力で引き寄せ抱き締めた。