第7章 不穏な影と全貌
「忌み子の分際でよくも……お前はもういらん!俺の子を産め!その子供を一生飼い殺しにしてやる」
更紗を押し倒そうと詰め寄るが、後ろへ飛ばれその手は空を切った。
「どうして分からないのですか?!そうしてあなたが踏み付けにする人にも、大切に思ってくれる人がいるんです!どうして自分だけの欲を満たそうとする?!私は忌み子じゃない!私は月神更紗、私には両親もいて、大切にしてくれる人達がいる!あなたの玩具じゃない!」
玄関から遠ざかりたくはない。
だが、玄関の前には怒りが頂点に達した屈強な男が立っている。
(どうにかして突破しないと……)
ほんの少し、僅かな時間、視線を玄関に向けた隙に更紗は男に手首を捕まれ押し倒されてしまった。
「大人しくしろ!痛くしねぇから心配すんな」
恐怖や怒りではなく、生理的嫌悪感から更紗の瞳から涙がこぼれ落ちる。
だが、ここで大人しくする訳にはいかない。
「私は、鬼殺隊 炎柱 煉獄杏寿郎様の継子であり婚約者です!汚らわしい手で触れるな!私はあなたのような醜い人間が気安く触れられるような人間じゃない!」
更紗は背中を目一杯後ろへしならせ、男の鼻目掛けて自らの頭を思いっきり打ち付けた。