第2章 追い風
あれから1度の休憩を挟み、産屋敷邸の門の前に到着して立派な門をくぐると、杏寿郎は更紗を地面に降ろしてやった。
きちんと杏寿郎の言う通りにここまで許可が出るまで目を開けず、今も目をつぶったままだ。
ただ目をつぶったまま、高速で運ばれていたので平衡感覚が乱れたのか少しフラフラしている。
「もう目を開けて良いぞ。まだ日が高いから、手で翳しててやるからゆっくりな!」
そう諭され、更紗はその通りにゆっくりとまぶたを開ける。
杏寿郎が手で影を作ってくれているが、真っ暗な世界からいきなり差し込む光は僅かではあっても確実に更紗の視神経を刺激する。
少し立ちくらみを覚えつつどうにか両足で踏ん張った。
「落ち着くまで掴まってても構わない!」
だが、相変わらず首を左右に振る。
更紗 は11年もの間、しかも幼少期から頼らせて貰えたことがなかったので頼り方も分からないし、頼る事が相手に迷惑をかけると思っているのだ。
「頼る事と甘える事は違う、はきちがえてはならない。育手と弟子という関係上、鍛錬では立場が違うが、今は人と人、対等な関係だ。我慢ばかりが事態を好転させるとは限らん。早く動けるようになる事が今は最善だ、分かるな?」