第7章 不穏な影と全貌
日輪刀があれば、間違いなく攻撃特化型の炎の呼吸の技で木っ端微塵に出来るだろうが、壁の向こうに人がいた場合、命の保障は致しかねる。
窓から見える太陽は攫われてから一刻ほどの位置まで昇っている。
日の光が小さな窓から入ろうとも何分山の上なので僅かな光のみでは手足の先からどんどん体温が奪われてしまう。
これ以上無駄に動いても体力を消耗するだけだと悟り、手のひらで足袋越しに足先を温めながらジッとしている。
「人の気配が全くしません……ここに連れてこられたということは、この屋敷の人の中に生き残った人がいたということですよね?」
独りごちるも、もちろん周りに人がいないので更紗の質問には誰も答えない。
「ここの家主でしたら……困りますね。杏寿郎さんや天元様に体術を叩き込まれましたが、体格差は埋まりませんし」
温かい人達の名前を口に出し更紗の瞳に薄らと涙が浮かぶが、流れ落ちる前に腕で拭いとる。
「泣いていてはことが起こった時に判断が鈍ります!人が来るまで教わった体術を反芻させておきましょう」
重い鉄の扉が開くまで、更紗はひたすら体術を頭の中で反芻させていた。