第7章 不穏な影と全貌
その頃、更紗は目を覚まし至って冷静に状況を確認していた。
(ここは……あの屋敷の部屋?目隠しと口の手拭いだけ外されてますが、手足は縛られたまま……ですね)
自分の格好を確認すると、杏寿郎にもらった着物を着ている。
「大丈夫……杏寿郎さんは夢じゃないです。それだけ分かれば……」
「更紗サン!!」
「うひゃあっ!!あ、あなた、追いかけてきてくれたのですか?」
更紗の隣りには、任務を共にする鎹鴉がいた。
鴉ならば鉄格子のはまった窓からでも易々とこの部屋に入ってこられるだろう。
「ハイ!お力にナレズスミマセン……手ノ縄ヲ解くノデソノママでいて下サイ」
「お願いします」
鎹鴉はさっそく以前くちばしを使って、器用に破れた障子を補修していた時と同じくあっという間に縄を解いてしまう。
そうして更紗は足の縄を解きながら鎹鴉に話しかける。
「ありがとうございます。あなた、お名前は何て言うのですか?言われなかったので、今まで聞かなかったのですが、あるのならば教えてください」
鎹鴉は照れたようにモジモジしながら答えた。
「私ハ、神久夜(かぐや)と申しマス。名前ガ大それてイテ伝エラレマセンでした」