第7章 不穏な影と全貌
杏寿郎が家の門の前に到着し、地面に打ち捨てられた帚と不自然に散らばった落ち葉を見て胸がざわつくのを感じた。
「更紗も千寿郎も、こんな状態で放り出すことはない」
玄関へ急いで駆け寄り、勢いよく引き戸を開ける。
「更紗、千寿郎!!」
ただ事ではない声に、千寿郎が慌てて台所からやって来る。
「兄上、お帰りなさい。あれ、更紗さんはご一緒ではないですか?庭で鍛錬をしていたと思っていたのですが」
杏寿郎の体から熱が一気に引いていく。
だが無事だった弟の体を力一杯抱き締め、歯を食いしばる。
「千寿郎、よく聞くのだ…… 更紗が何者かに攫われた可能性がある。急ぎ父上を居間へお呼びしてくれ。俺は先程まで一緒だった宇髄に鴉を飛ばす」
千寿郎は顔を青くして目に涙を浮かべながら、杏寿郎の言葉に頷き全力で父親のいる部屋へ駆けていく。
そして杏寿郎は屋根に止まっていた鎹鴉を呼び、宇髄への伝言を預ける。
「任務後にすまないが、宇髄に伝えてくれ。更紗が攫われた可能性が高い、捜索の協力を頼むと」
「ウム!」
鎹鴉が飛び立ったのを確認し、杏寿郎は急いで千寿郎と槇寿郎が待つ居間へと急ぐ。
その顔は以前、隠に怒っていた時とは比べられぬほど険しく歪んでいた。