第6章 柱合会議とお食事会
「杏寿郎さん!!」
いきなり勢いよく名前を呼ばれ、杏寿郎もその勢いのまま言葉を返した。
「何だ!!」
「これ!杏寿郎さんに!!」
「そうか!分かっ……え?!俺にか?!」
「はい!!」
短い応酬を繰り返し、更紗から差し出された髪紐を受け取る。
「嬉しいが、君の欲しい物はないのか?」
もらったお給金は多くはないので、更紗にとっては貴重な金のはずだ。
「私、1番に杏寿郎さんに自分のお金で贈り物をしたくて!私が勝手に選んだので……好みではないかもしれませんが……」
尻すぼみに小さくなる声に首を左右に振って、杏寿郎は手に持っている髪紐に視線を落とす。
赤から黄へと順に色を変えるそれは、炎柱の証である羽織や自分の髪色と似ている。
「ありがとう!女子から贈り物などされたのが初めてで戸惑ったが、更紗に1番に貰えると殊更嬉しい!」
パァっと顔色を明るくする更紗に笑顔を向けると、早速今の髪紐を解き、贈られた髪紐を器用に使い、少し端が垂れるようにして結び直す。
「似合うか?」
「はい!とってもお似合いです!」
「フフッ!ではこれから毎日大切に使わせてもらう」
頬を赤らめてフワリと笑う更紗の頭を撫でた後、背中を軽く押して歩くよう促す。
「では、そろそろお館様の元へ向かおう。今から行けばちょうどいい時間だ」
「はい」
道を歩く2人の髪から、嬉しそうに髪紐が揺れていた。