第6章 柱合会議とお食事会
握られた手首に痛みを感じたような気がしたが、その後、突然優しくも強い力で抱き寄せられ、温かい感覚が更紗の体を包み込む。
そこで意識が急浮上するように一気に覚醒し、大きく息を吸い込む。
目の前に広がるのは宿の部屋と、フワフワと温かい太陽のような色の綺麗な髪だった。
「杏寿郎……さん?夢じゃない……ですよね?ここが現実ですか?」
強く抱き締められているので、更紗もその存在を確かめるように背中に手を回す。
「夢ではない!俺はここにいて、更紗を抱き締めている!大丈夫だ、ゆっくり息をしなさい」
杏寿郎の言葉に従い、更紗は何度かゆっくりと呼吸を行うとようやくここが現実なのだと実感して体の力を抜いた。
「よかったです。杏寿郎さんが私の夢だけの存在ではなくて……ホッとしました」
ヘラッと笑う気配を感じ、杏寿郎は更紗の顔を覗き込む。
痛々しい涙の跡に胸を締め付けられるも映った表情はいつもの笑顔だった。
それに安堵して更紗を少し布団の端へ寄せ自分も同じ布団の中に入った。
「俺は更紗が俺の夢の中だけの存在だったなら、起きた瞬間に壊れる自信がある」
更紗を安心させるように、自分も安心出来るようにギュッと抱き締める。