第6章 柱合会議とお食事会
そうして旅の準備をするが、たった一晩だけの準備なのですぐにそれは終わり、無事に千寿郎と更紗は一緒に夕餉の支度をする事が出来た。
その夕餉の席で更紗にとって初めての事が起こった。
いつものように槇寿郎の夕餉は箱膳に乗せ部屋に運んだのだが、それを気難しい顔をしたまま槇寿郎が居間へ自ら持ってやってきたのだ。
更紗はもちろんだが、槇寿郎の息子である2人の驚きといったら想像を絶するものだった。
上手く言葉をかけることも出来ず、3人が卓袱台の前に座り当主が箱膳を持ったまま立ち尽くすという不思議な光景が広がっている。
だが更紗は驚きよりも嬉しさが勝っているようで、槇寿郎のそばに歩み寄り手に持っている箱膳を受け取り席へ促した。
「お義父さま、こちらは私が並べますので杏寿郎さんのお隣に座ってください。私、いつも全員で食べたいと思っていたので、凄く嬉しいです!」
お世辞でも何でもない純粋な喜びを表現するような更紗の笑顔に、槇寿郎も表情を緩める。
「手間をかけるな、ではよろしく頼む」
そして杏寿郎の隣りにドカッと腰を下ろすも、心なしか居心地悪そうに体を縮こませた。