第5章 色変わりの刀と初任務
「この時ばかりは稀血である自分に感謝ですね」
鎹鴉から声はまだかかっていないので、急いで男性の傷口に手を当てその部分だけに力を発動させる。
村での約束事もあるが、杏寿郎にもしのぶにも人前で使ってはいけないと釘を刺されている。
過ぎたる力を持つ者は悪しき人に利用される為くれぐれも慎重にしなさいと言われているので、目立たないようこの男性の意識が戻らないうちに終わらせなくてはならない。
男性にいたっては血は死に至る程は流れていないので、おそらく鬼に襲われ肉を噛みちぎられる痛みで気絶しているようだ。
その傷は銀色の粒子に包まれ、ゆっくり元あった形に戻っていく。
「あと少し……」
「更紗サン!人ガ来ます!その男性ハもう大丈夫です!ココを離レましょう!」
全て治癒出来なかったのは心残りだが、2人との約束を破ることは出来ない。
傷から手を離しその場を急いで離れ町の外を目指す。
「更紗サンの手の傷は治さないノですか?」
鎹鴉の言葉で自分の手の甲が爛れている事を思い出す。
今まで何もかもに無我夢中だったので忘れていたが、思い出すと不思議とジクジクと痛み出してきた。