第5章 色変わりの刀と初任務
だが、自分の傷を治している余裕は今の更紗の残りの体力的にはない。
「傷を治癒してしまうと、おそらく私は行き倒れになります。この時間ですとお店も開いていませんし、残りのお弁当を食べても……足りないと思いますので」
「ソウなのですね……では、町の外二出たら包帯で応急処置だけシマショウ!」
鎹鴉の案に頷くと、白み始めた空を見上げる。
「無事に任務完了です。残りのお弁当を一緒に食べたら、先にお家に戻って今から帰る旨を伝えてくれますか?」
「でも、お1人デ大丈夫ですカ?お家マデハ距離がありマスし、お疲れでしたら藤ノ花ノ家紋ノ家に寄って行かれても良いと思イますが……」
心配そうに顔を覗き込んでくる鎹鴉の頭を優しく撫で、笑顔を向ける。
「ご心配ありがとうございます。でも幸運なことに道は複雑ではありませんし、一刻も早く帰りたいので」
いまだに心配そうに顔を覗き込んでいるが、本人が望んていることだと言い聞かせ承諾した。
「分かりマシタ。必ずお家ノ方二お知らせしマス」
こうしてようやく更紗の初任務は終わった。
後は帰りを待ってくれている、あの優しい家に帰るだけだ。