第5章 色変わりの刀と初任務
「私は……ただあの人ともっと一緒に……」
そう言い残し、塵となって空に舞ってしまった。
「愛する人と一緒に……いたかったのですね……その気持ちだけは分かります」
更紗は悲しそうに顔を歪め祈るようにその場で手を合わせるも、被害者を探さなければならない。
更には抱えてきた女性を家まで送り届けなければならないので、すぐ自分の後ろにいる女性の様子を確認する。
ぶつかった時に手を擦りむいたようだが、外傷はどうやらそれだけのようだ。
「手以外に怪我はありませんか?」
「あ、はい。大丈夫です……あの、あなたは?それにあの化け物は?」
女性の当たり前の質問に困ったように笑うと、自らの人差し指をその女性の唇へソッと置く。
「秘密です。今日の事は早く忘れた方があなたにとって幸せですから」
フニャッとした笑顔に思わず女性もドキッとしたようで頬が少し赤くなっている。
そして笑顔の裏に何も話さないと言う強い意志を感じ、女性は諦めたようにゆっくり頷いた。
「さて、そこの川でお互いに傷口を洗って行きましょう。家まで送り届けますので道案内お願い致します」