第5章 色変わりの刀と初任務
更紗は1度自分の方へ強く鬼を引っ張ったかと思うと、今度は勢いよく鬼を突き飛ばす。
「ぐっ……あんた何なの?!」
鬼の言葉に答える訳もなく刀を構えた。
「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」
鬼の体を下から上へ勢いよく切り上げ、動きを止めさせる。
「舐めるんじゃないわよ!」
グラリと体勢を崩しながらも血鬼術を繰り出してくるが、避けて今この好機を逃せば戦闘が長引くと判断し、最低限体にかからないように体を動かす。
だが、手の甲を直撃しジュッと嫌な音を立てて更紗の皮膚を溶かしていった。
「ーーっ!!炎の、呼吸 壱ノ型 不知火!」
痛みを堪え、凛とした炎を発しながら勢いよく間合いを詰め、鬼の頚に刀を躊躇いなく振るう。
「そんな細腕で!!あんたの方が鬼みたいじゃ……」
言い終わる前に鬼の頚が胴体と離れ地面へと叩きつけられる。
「鬼みたいに強くなければ鬼に勝てませんので」
すでに塵となりつつあるので聞こえているのかは判断出来ないが、丁寧に言葉を返し転がっている頭の前で跪くと左手でその頬に触れる。
「あなたの来世が、どうか幸せなものである事を祈っています」
するとまだ残っている鬼の瞳からポロポロと涙がこぼれた。