第5章 色変わりの刀と初任務
更紗の任務地は鎹鴉の言った通り、山越えをする必要のない場所に佇む町だった。
遠くはないが歩いての移動なので辺りは暗くなり、住人達は家の中なのか僅かにそこから盛れ出る灯りと月の光が道を照らしている。
シンと静まり返り、風に揺られて木の葉がこすれる音が大きく聞こえる。
「どこに鬼がいるか分かりますか?」
更紗の肩に止まっている鎹鴉に問い掛けるも、首を左右に振られてしまった。
「コノ町に出るト言う事シカ分かりマセン。飛んデ様子を見テキマス」
「よろしくお願いします」
鎹鴉はその言葉を聞くと翼を大きく広げ、夜空に溶け込むように羽ばたいて行った。
その直後、更紗に向けられているであろうどす黒い敵意が体をドロッと覆っていく。
すかさず日輪刀を鞘から抜き、辺りを見回すが姿は見つからない。
だが、向こうはこちらを認識しているのは確実だ。
(早く見つけないと不利になってしまう……)
更紗が全方向に意識を張り巡らせた時、頭の上にポタリと何かが落ちてきた。
それを触って確認する。
「水……ーー?!」
更紗は勢いよく横に飛び、指に着いたものを地面に擦り付けて拭いとる。