第5章 色変わりの刀と初任務
「ココより西ノ街、スデニ数人ノ被害者ガ出てイマス。場所はココカラ近いノデ、夕刻カラ共に出発シマショウ」
「分かりました。道案内をよろしくお願いしますね」
「オ任せクダサイ」
報告を終えた鎹鴉はちょこちょこ歩き自分が突き刺さってしまった障子を見上げると、パタパタと軽く羽を羽ばたかせ器用に嘴を駆使して穴を塞いでいく。
そして出来る限りの修繕を終えると床に降り立ちもう一度そこを見て、まるで落ち込んだように首を項垂れさせトボトボと部屋の隅に移動して向こうを向いて座ってしまった。
一連の動きを見守った後、恐る恐る更紗が杏寿郎を見やると顔を背けて肩を震わせている。
「杏寿郎さん、何か仰りたい事があるならば言っていただけた方が心が軽くなります」
その言葉で我慢の糸が切れたのか、ブッと吹き出した。
「更紗が2人いるような感覚に陥る!ほら、隅で落ち込んでいる子を連れておいで。あのままでは不憫だ!腕に抱いたままで構わないから父上に初任務の報告に行こう!」
更紗は腑に落ちないが確かにあのままにしておくのは可哀想なので、そっと腕に抱き上げ杏寿郎と共に槙寿郎の部屋へ向かう。
鎹鴉がひっそりと涙を流していた事は杏寿郎には黙っておいた。